2021/08/29
歯はとても大事な体の一部で、消化器の役割も併せ持つ部分です。8020運動があるように、出来るだけ歯を多く残そうとするのが歯科医師として当然の行為です。しかし、歯列矯正の場合は歯を抜くことが多々ありますよね。これはいったいどうしてでしょうか。
ずっとずっと昔の話になります。矯正治療がアメリカで浸透した頃に、現代矯正治療の大家であるAngle(アングル)という先生が、1900年代はじめに非抜歯治療を推奨していました。しかし、治療後に口元が出っ張ったり歯並びの後戻りが問題になる症例がありました。そこで1911年に「歯を抜いたほうが良いケースもあるのではないか」と論争になったのが『抜歯・非抜歯論争』です。
Angle先生の死後に、その弟子であるTweed(ツイード)先生が、非抜歯で一度治療をおこなった症例患者さんにお話をして、抜歯をして再治療をしました。そして抜歯の有益性がそれによりハッキリし、発表するに至りました。
この時のTweed先生の結論としては、口元や噛み合わせのバランスを取るために歯を抜くことは必要だということでした。また、そのバランス分析のために検査項目がいくつも確立されたのです。
現代の矯正治療でも、同じくいくつもの検査をし、分析をしたうえで抜歯するかどうかを決定します。私も歯医者ですから、出来る限り歯を抜きたくありません。しかし、顎の骨が狭かったりすると、歯を並べようにもスペースが足りずに出っ歯になったり、顎の骨から歯根がはみ出したりして将来的に歯が抜けやすくなるので、そういった場合は歯を抜くことを選択します。
歯を抜くことが絶対的な悪なのではなく、その人の口に合った本数・咬み合わせを優先してあげることが大切だと思っています。
次回はもう少し詳しく歯を抜くケースについてお話しします。