思春期と矯正治療(前編)

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 昔のことです。患者さんの親御さんがどうしても矯正治療を受けさせたいと言って、中学生のお子さんを連れておいでになりました。

 

「子供が受け口なので、早く治して欲しいのです。」

 

当時、私は別の医療機関で上司の指導の下で矯正治療をおこなっていました。まだ駆け出しの矯正歯科医であった私は、親御さんから話を聞いたうえで、ご本人(お子さん)にも聞いてみました。

 

「〇〇さんは、どこが気になりますか?」

 

すると、その方は

 

「どこも気になっていません。」

 

とおっしゃいました。

 

 私と上司でよくよくお話を伺ったところ、親御さんは絶対に矯正治療を受けさせたいのですが、患者さまご本人は矯正治療を受けたくないというのです。そういうケースにはまだ対応していなかった私は大変困りました。ご本人が望んでいないことはしたくないからです。しかしご相談にいらしたのですから、私は上司とともに“矯正治療で得られるメリット”や“矯正治療をすることで起こる不快事項”と、現在の状態を放置した場合に予測されることをご本人にお伝えはしました。一度おうちで相談してきてねと、その日は終わったのですが、次にいらしたときには親御さんが説得して矯正治療をすることになりました。

 

(後編へ続く)