2024/11/19
前回、MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)の症状や定義について、簡単に説明しました。今回はリスク因子や病気の発症の仕組みについてお話しします。
MRONJが発症するリスク因子ですが、骨粗しょう症のお薬や抗がん剤などの投与を受けている患者さんはお薬に関する因子・局所因子・全身因子・遺伝的要因が加わると発症するリスクが高くなると報告されています。特に上記のリスク因子が重なったとき、注意が必要です。
【薬に関する因子】
・BP製剤 高用量が低用量より発症頻度が高い
・Dmab製剤 高用量が低用量より発症頻度が高い
・長期間の投与でリスクが高くなる
【局所因子】
・歯周病、歯の神経の病気、顎の骨の炎症、インプラント周囲炎
・抜歯などの侵襲的な歯科治療
・お口の中が汚れている
・合わない入れ歯や強すぎる咬合力(噛む力)
【全身因子】
・糖尿病
・自己免疫疾患
・透析中の患者さん
・骨の病気(骨軟化症、ビタミンD欠乏、骨パジェット病)
・重度の貧血
・生活習慣(喫煙、飲酒、肥満)
【遺伝的要因】
・特定の遺伝子の型
MRONJが起こる仕組みですが、骨の代謝の阻害が起こることで引き起こされると考えられています。本来、感染や受傷などで骨がダメージを受けたときに、新しい骨が作られ古い骨が溶かされることで骨の代謝が進み治癒していくのですが、このサイクルを邪魔することでMRONJが発症します。BP製剤やDmab製剤は、骨を溶かす細胞の働きを悪くすることで骨密度を上げます。これにより骨の代謝が抑制され、新しい骨に置き換わることなく顎骨壊死が起きます。そのほか、細菌感染がMRONJ発症だけでなく、重症化させる役割を持っています。
BP製剤は、血管を新しく作ることを邪魔することが報告されていますが、骨の中にも微細な血管が多くあり、それらが顎骨に栄養を運んでいます。もしも抜歯したときに血管が新しく作られず、また骨も新しく作られないならば、抜歯した穴の治癒が遅くなってしまいます。つまり、骨への栄養供給が絶たれてしまうことで顎骨壊死が起きたり、治りが悪くなったりするのです。